artbook2 活版印刷_1月

b0072947_20241138.jpgたちどまりたい風景はありますか?

ここは、京都市左京区にある活版印刷所、加藤第一印刷さん。活版印刷という種類の印刷があることは知っていましたが、実際どのようなものかよく知らないでいました。アートブック創刊号の発行が縁で知り合った方から教えていただき、興味のある人たちと伺い、印刷物の制作を通じ、いろいろなことを学ばせていただきました。
b0072947_2024211.jpg次号のアートブックで、どこかのページや付録に活版印刷が使えないか思案しています。冒頭文の活字を拾ってみることにしました。2日がかりで、活版のケースから5号の文字を拾うことができました。右側の小さな文字はルビ用です。肉眼でもみれるかみれないかの大きさで、虫眼鏡が必要です。

※号とは、活字の大きさの単位です。
b0072947_20242936.jpgレイアウトのプラニングのための手書きの原稿です。普段はパソコンで入稿のための原稿を作ることが多いので、アナログな方法でも伝えられることは新鮮な体験でした。
b0072947_20243873.jpg文選工職人の山田信雄さんに教えていただき、組版にも挑戦させていただきました。長さや厚さの違う木インテル、様々な大きさのコミを組み合わせ組んでいきます。小さなルビが倒れそうになったりなど・・頭と手と根気と集中力のいる作業です。最後は、見事な手さばきとスピードで職人さんが仕上げてくださいました。
b0072947_20244929.jpg結局、大きな2号の文字は、本文の上に配置することになりました。

職人さんの作業を見たり、お話を聞いていると、何か忘れかけている人間の手や思考回路の可能性を思い出すような瞬間に出会います。




b0072947_20245885.jpg印刷機にセットするため器具に版を取り付けます。ここで、印刷の位置あわせの調整も行われます。

出来上がったものは、持てないほどものすごく重いです。しかし、それを85歳の活版印刷職人さん、加藤博さんが軽々と何往復も調整のため持ち運ばれます。
b0072947_202554.jpg紙の厚さが印刷用紙も含め1ミリになるように調整します。紙の厚さが変わるたび何度も行われます。今回は、見出しの文章により圧がかかるように透けるほど薄い用紙を一枚挟み調整されました。
b0072947_20251353.jpgインク調整、機械の調整、圧の調整・・・機械のまわりをてきぱきと動き回られながら、ベストな一枚になるまで調整が続きます。

このハイデルベルグ印刷機、プラテンは、機関車のような本当に面白い動きをします。
b0072947_20252151.jpg本紙の前に校正刷りが行われます。活版ならではの、文字のかけやさかさま文字、組み違いなどの間違いを発見するのも面白い機会です。

2号の文字の欠けは、阪神淡路大震災のときの被害で、多くの活版にできた傷が原因だそうです。震災の記憶がこんな小さな文字ひとつひとつに残っているのです。


b0072947_20253145.jpg美しく力強い印刷が完成しました。

ここでは、職人さんの大半が定年を過ぎ、仕事も以前ほど激減し、廃業か存続かという危機にあります。しかし、活版の魅力に魅せられた人々や学びたい若者が時折、訪れます。

アートブック2号でもこの機会に活版のページを設けてはどうでしょうか?



※追記

2012年4月20日に加藤第一印刷さんの工場は惜しまれつつ閉鎖されました。工場の建物、印刷機、活字などは、売却されたりで方々へ・・そして残った多くの活字や版などは廃棄処分となりました。最後の1ヶ月は、皮肉なことに多くの仕事が舞い込み、休日返上、遅い時間まで印刷機は動き続けました。
京都新聞http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20120407000073、
産経新聞http://photo.sankei.jp.msn.com/kodawari/data/2012sya-ing/kaxtupan/
、読売テレビなどのマスコミの取材も相次ぎありました。訪れると、片付けを手伝う精華大の学生やプライベートプレスをする若者など若い世代人々にいつも出会いました。この動きがもう少し早く起これば、この場所はもっと面白い場所になっていたかもしれません。しかしこの光景を見ていると、時代の流れからは需要が減ってしまったものの中にも、今の時代ならではの、別の新たな需要があると思わずにはいられません。

大将の加藤さんは、パリ・フランス国立印刷所の「文字の母たち」という本を大切にお持ちでした。ここは、国が保護をして世界中の活字を集めてあるといいます。日本もいつかそうなれば・・それにはもっと外からの声がなければと話します。改めて65年間京都の印刷文化を支えてきた、高い技術と熱意を持った職人さんが働く場所を失ったことを本当に残念に思います。しかし、今後も語り手や指導者として活版に携わっていただけたらと願います。

2号の冒頭の文章を組んだ組版は、現在、自宅にて大切に保管しています。なんとか印刷して2号の一ページとなればと思います。京都でも、ものすごく数少ないそうですが、活版印刷をされている印刷所もあるそうです。最近、北斗社印刷所さんを教えていただきました。

加藤第一印刷さんは最後に大量の愛宕さんの『火迺要慎』(ひのようじん)のお札を印刷されていました。お札をみるとその風景を思い出します。(5月20日)

(水口記)



by oeap | 2012-01-22 21:38 | アートブック編集会議


高速道路建設により変容する京都・西山の風景と関わるアートプロジェクト


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